中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の商隊護衛

はじめに

西洋中世風ファンタジー世界に商隊護衛は付き物です。これを描写するには何から守るかどのくらいの人数で守るか夜はどう過ごすのか、といったことを考えて妥当な状況設定をしないといけません。ここではそれらについて考察します。

襲撃者

護衛するからには何かから襲われる危険があるわけで、護衛の方法はその何かを具体的にしなければなりません。ファンタジー世界なら魔物はお約束ですし、現代社会において主な襲撃者は強盗ですから盗賊も考えられます。ここではそれらがどんな風に襲ってくるか考えます。

魔物

強力な魔物が襲ってくる設定は面白いですが、そうそう起こることではありません。後述する護衛費用に関係するのですが、護衛に費用が掛かり過ぎると商売が成り立たないからです。そう考えると、強力な魔物がいるかいないかではなく、商人は比較的弱い魔物しか襲ってこない場所を商売の道として選ぶはずで、であるならば強力な魔物が襲ってくるのは異例の事態と言えるでしょう。

ということで、魔物については度々襲ってくるかもしれないが、それはゴブリン程度くらいの考えでいいのかな、と思います。

盗賊

盗賊は魔物より厄介です。人間には知恵がありますのでどうやって襲うかについて考えてくるはずだからです。ではどんな風に襲ってくるか、ここは自分ならどうするかについて俺的襲撃方法を考えてみます。

まずは商隊を停止させたいところです。これについてはあまり難しくありません。商隊は異常を察知したら戦闘態勢に入らざるを得ませんから行く手に現れるなり茂みから矢を射るなりするだけです。

もしかしたら商隊は突っ切ることを選択するかもしれませんが、行く手に丸太を横たわらせるだけで済みます。馬車の車輪ではあまり大きな段差を素早く越えることができませんので比較的細くて持ち運びしやすいものでいいのではないでしょうか。

ひとつ注意したいのは事前に横たわらせておくと面白くない点です。商隊はかなり前から察知できますので、かなり前で停止します。そうすると襲撃点を設定しづらくなってしまいます。なので、いいタイミングでささっと運び出して横たわらせるといいのではないでしょうか。

で、肝心の攻撃です。商隊の人員を皆殺しにするかどうかは別途考えたいところですが、少なくとも護衛を無力化する必要があります。初撃はセオリーにのっとって遠隔攻撃が良さそうです。次の攻撃方法についていくらか思いつくものを挙げます。

  • 全員を弓矢や魔法で倒すことが考えられます。ですが、あまり遠くからでは狙えません。例えば的が動いていることを考慮して流鏑馬を参考にするなら的の距離は 5m ほどですし、ピストルでも競技では 25m ほどになります。このあたりを考慮すると良さそうです。
  • 常道と言えば切り込む方法があります。護衛が戦闘態勢へ入る前に一気に攻めるのが肝要です。
  • 反則的なものでは魔法で眠らせることも考えられます。これは前方を塞ぐとかしなくても使える方法ですが、これが有効だとすると催眠魔法最強になってしまうので物語の世界観に関わる大きな問題です。多くの場合において某かの設定で使えなくしておくべきでしょう。

護衛

襲撃者側の事情の次は商隊側の事情を考えます。つい忘れがちになる重要な要素としてコスト(護衛費用)が絡んでくるのは面白いところではないでしょうか。

護衛費用 – 商人

商人としては利益を大きくしたいのですから、護衛費用は抑えたくなります。これについては物価積載量町でまかなえるものは商わないなど考慮すべきかもしれませんが、ちょっと難し過ぎて僕の手に負えません。それよりぱっと見で分かりやすく荷馬車より護衛馬車が多くならないくらいで考えるのが妥当だと思います。では具体的にどんな商隊編成が考えられるか例を上げてみます。

  • 2 台編成、護衛 1 台、護衛率 50%
    護衛荷車
  • 3 台編成、護衛 1 台、護衛率 33%
    護衛荷車荷車
  • 4 台編成、護衛 1 台、護衛率 25%
    護衛荷車荷車荷車
  • 5 台編成、護衛 1 台、護衛率 20%
    護衛荷車荷車荷車荷車
  • 6 台編成、護衛 2 台、護衛率 33%
    護衛荷車荷車荷車荷車護衛
  • 7 台編成、護衛 3 台、護衛率 43%
    護衛荷車荷車護衛荷車荷車護衛
  • 8 台編成、護衛 3 台、護衛率 38%
    護衛荷車荷車荷車護衛荷車荷車護衛
  • 9 台編成、護衛 3 台、護衛率 33%
    護衛荷車荷車荷車護衛荷車荷車荷車護衛
  • 10 台編成、護衛 3 台、護衛率 30%
    護衛荷車荷車荷車荷車護衛荷車荷車荷車護衛
  • 11 台編成、護衛 3 台、護衛率 27%
    護衛荷車荷車荷車荷車護衛荷車荷車荷車荷車護衛

戦闘範囲 – 冒険者

雇い主の商人と違って、雇われる側の冒険者はあまり贅沢を言えません。少々きつくても可能な範囲で護衛を務めることになるでしょう。そこで戦闘可能な範囲について考えます。

戦士系

fig.1 のように考えるとだいたい幅 3.7m 、前方 2.1m が攻撃範囲になり、パーティで陣形を組む際に考慮します。

fig.1 戦士系攻撃範囲
fig.1 戦士系攻撃範囲

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魔法使い系

魔法使いは単独だと前方 180° と射程距離が攻撃範囲になりますが、戦士系の後ろから攻撃することを踏まえて fig.2 のように考えると前方 90° が攻撃範囲になり、パーティで陣形を組む際に考慮します。

fig.2 魔法使い系攻撃範囲
fig.2 魔法使い系攻撃範囲

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パーティ

戦士系 3 人、魔法使い(攻撃系) 1 人、魔法使い(回復系) 1 人で fig.3 のような陣形を組むとだいたい幅 10.8m が攻撃範囲になり、商隊列への配置の際に考慮します。

fig.3 パーティの陣形
fig.3 パーティの陣形

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護衛の配置 – 馬車

fig.4 を基本として 9 台を並べると fig.5 のようになり、護衛は隊列の先頭と後尾および中央に配置することが考えられます。この配置では隊列の長さが約 100m に及びますが、中央の護衛について 50m 走の平均記録を参考にすると 10 秒程度で先頭または後尾にたどり着くことができ、奇襲へのリカバリーも可能かと思います。

fig.4 馬車の配置
fig.4 馬車の配置

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fig.5 商隊列と護衛の配置
fig.5 商隊列と護衛の配置

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野営

1 日で済む護衛では不要なことですが、複数日掛かる場合は夜を明かさなくてはなりません。後述する駐車の配置を考慮すると町や村の中に駐車することは難しいと分かります。ここでは野営を前提に考えます。

駐車場 – 町・村

町には駐車場が設備されているかもしれませんが、現代でも駐車場不足が問題になる中、城壁や市壁に囲まれて限られた広さしかない世界ではもっと駐車場事情が悪いと予想でき、設備される駐車場は城壁や市壁の外になるのではないかと考えられます。壁の外では魔物や盗賊へ警戒しないといけないので必然的に野営になるのではないでしょうか。

また、村において広場のような場所へ駐めさせてもらうと言ってもスペースは限られ、長距離を移動する大きな商隊では収まり切らないのではないでしょうか。それでも、交易路の周囲にある村では柵の外に商隊向けの粗末な広場を設けて現金収入にするかもしれません。これも城壁や市壁の外と同じく魔物や盗賊へ警戒する必要性から野営になるのではないでしょうか。

これらを踏まえて 9 台の馬車を並べるスペースについて考えると fig.6 のように 30m x 20m 程度の広場が必要になります。

fig.6 広場での野営
fig.6 広場での野営

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駐車場 – 道

さて、町や村に十分なスペースが確保されていない場合や、日没までに町や村へたどり着けなかった場合は道端に広いスペースを見つけて~という話の展開をしばしば見かけるのですが案外に難しい話です。

中世前期ヨーロッパを考えれば人が住むところ以外は深い森のはず(植生の観点から見ると気候によっては 200 年ほどで草原が深い森林になります)です。

また、中世中期や後期を考えても、畑や町にするための開墾しかしてないとすれば、ただの広場は出現しません。

このれらの事から道端に縦列駐車して野営をする場合もあるのではないでしょうか。その場合は fig.7 のようになると考えられます。

fig.7 道に沿った野営
fig.7 道に沿った野営

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食事 – 輪になる

野営で食事を取るには各個が携帯的な食料で済ますことも考えられ、この場合は難しいことはありません。ただ、全体の士気や雰囲気を統率するにはいちどうにかいして食事を取るのが望ましいでしょう。そういった場合は次のようになると考えられます。

全員が輪になる

fig.8 のように考えると約 7.4m x 7.4m 、面積にして 54.8㎡ が必要になります。この面積は 30 帖に相当し、結構広いです。

fig.8 全員が輪になる
fig.8 全員が輪になる

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半分ずつ輪になる

fig.9 のように考えると 10.4m x 4.4m 、面積にして 45.8㎡ が必要になります。上述より面積は小さくなりますが広さとしてはあまり変わらないようです。

fig.9 半分ずつ輪になる
fig.9 半分ずつ輪になる

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おわりに

商隊護衛というネタ自体は、例えばネット小説で言えば 1 ~ 2 話で完結するくらいのものだと思います。そうするとここまで妥当性を考慮しても書くスペーすがないですし、だとすれば読者の想像任せにするところが大きいため逆に不自然に感じられるかもしれません。そんな中で僕がこの記事を書いたのには「商隊護衛で 1 章分くらい書いちゃる」と考えているからです。と言うかこの記事の執筆現在プロットが半分くらいできてます。

どうも僕は妥当性とかいうのにこだわりたくなる性分なようで、かつて使っていた CAD で作図して考察しました。まぁ僕なりに満足です。

この記事については商隊護衛へ直接の参考にならずとも、他の何かの助けになるなら幸いだなぁと思っています。何にしても情報共有はしていきたいところですね。