弥生タイムのブログ

中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の都市人口

ファンタジー小説の都市でも現実世界の都市の規模を参考にするのではないでしょうか。例えば中世ヨーロッパをモデルにした作品なら、当時の都市の人口などが気になるところです。ここでは実際の中世ヨーロッパの都市人口と、冒険者人口から推定した都市人口を見ていきます。

実際のところ

中世ヨーロッパ

まずは「中世ヨーロッパっていつなの?」という話から。

ウィキペディアのページ中世ヨーロッパを参照すると下のようにあります。

  • 5世紀〜10世紀のヨーロッパについては 「中世前期」
  • 11世紀〜13世紀のヨーロッパについては 「中世盛期」
  • 14・15世紀のヨーロッパについては 「中世後期」

と言うことで、 5 世紀~ 15 世紀 = 西暦 401 年~ 1,500 年になります。

では、実際に中世ヨーロッパの都市の人口はどのくらいだったでしょうか。複数の資料を参照して下の記述を見つけました。

一万人以上の住民を擁する都市は、中世の尺度からすれば、それだけでもう確実に大都市であり、住民が二千から一万人の都市は中都市とみなされる。それ以下の人口であれば小都市であり、それらの大部分は五百人に達しない侏儒都市であった。人口が五万人かそれ以上ならば、中世においては「世界都市」といえよう。

西欧中世史事典―国制と社会組織― ( 240 ページ )

それでも、一三〇〇~五〇年に、推計ではあるが一〇万人以上の人口をもつ「特大都市」としてパリ(二〇万)、ミラノ(一〇~一五万)、フィレンツェ(一〇~一二万)、ヴェネツィア(一二万)、ジェノヴァ(一〇万)など、また四万人以上のインターローカルな「大都市」としてロンドン、ケルン、ヘント、ブルッヘ、ピサなどを挙げることができる。 ~ 他方、人口二〇〇〇人から一万人程度の「中都市」、二〇〇〇人以下の「小都市」が、フランスや神聖ローマ帝国の都市の八〇パーセント以上を占めていたことも事実であり、……

図説 中世ヨーロッパの暮らし ( 51 ~ 52 ページ)

この他、ウィキペディアの歴史上の推定都市人口も参考になります。

上記からすると、おおむね下のように考えることができます。

  • 特大都市(世界都市) : 5 万~ 20 万人
  • 大都市 : 1 万~ 10 万人
  • 中都市 : 2,000 ~ 1 万人
  • 小都市 : 2,000 人以下

冒険者から考える

作品の設定を考える際の順番として下の 2 種類が考えられます。

  • 主人公の設定をして、彼が活躍する世界を作る
  • 世界設定をして、そこで活躍する主人公を作る

ここでは前者を採用し、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で、主人公に人気の職業「冒険者」について考えます。つまり冒険者が快適に活躍するにはどのくらいの規模の都市が必要かということです。

想像する

とりあえずのところ、冒険者が 1 つの大都市に何人くらいいるのが理想的なのかということについて、想像したり感覚で「ぱっと」思いつくものとして(僕の場合は) 1,000 人ほどはどうでしょうか。 1 パーティに平均 5 人のメンバーがいるとすれば 200 パーティある計算です。 1,000 人がどのくらいの規模なのか考えます。

高校

身近な例として高校を想定します。 1 クラス 40 人、 1 学年に 8 クラスとして、それが 3 学年分とすると 高校 1 校で 980 人となります。 1 校 700 人ほどが全国平均らしいのでなんとなく想像できると思います。

人口 1 万~ 10 万の、現代日本で言えば地方都市といった規模の街に高校 1 校分の冒険者です。このくらいの規模の都市には複数の高校がありますので、感覚的に 1,000 人はとても少ない印象です。とはいえ、後述しますが現代の軍を参考にすると戦闘要員は少ないもののようです。

混み合い

もう少し考えます。冒険者ギルドは混み合う時間もあるかと思いますが、いろいろと作品を読んでいて大きな冒険者ギルドで受付窓口は 5 個とかあり、そこが混み合うわけです。その辺りを下のような数字にしてみました。

  • 窓口は 5 個
  • 一列に並ぶのは平均 5 パーティ
  • パーティのメンバーは平均 5 人
  • 混雑時に列がはける回数は 5 回

すると下のような計算ができます。

5 [ 個 ] x 5 [ パーティ ] x 5 [ 人 ] x 5 [ 回 ] = 625 [ 人 ]

さらに、危険な職業なので 2 日働いて 1 日休むとすれば、 1 日に活動しているのは全体の 3 分の 2 となります。 3 分の 2 が 625 人だとすると全体の人数は 2 分の 3 倍、すなわち

624 x 3/2 = 937.5 [ 人 ]

となります。高校の例と比較して同程度の数字になりました。

ということで

大都市の冒険者の数は 1,000 人と仮定して話を次に進めます。

現代に置き換える

冒険者という職業を現代に置き換えると何になるでしょうか。下の 2 つの例を挙げ、それぞれについて具体的な数字を使って考えます。

  • 少数派職業
  • 軍事的職業

日本の少数派職業

現代日本で少数派職業の従事者はどのくらいを占めるでしょう。例えば「労働力調査(基本集計)平成28年(2016年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等[1] を参照すると「農業,林業」「情報通信業」「公務」などが比較的少なくそれぞれの就業者数は 200 万人くらいです。

それから「平成27年国勢調査結果確定人口に基づく改定数値(平成27年10月~28年6月)[2] 」を参照すると日本の総人口は 12,500 万人くらいです。

これらから、少数派職業の就業者比率は全体の 1.6 [%] と、なります。

自衛官

冒険者は軍事的な側面が強い職業です。現代日本では日本の防衛を司る自衛隊の自衛官が近いのではないでしょうか。

防衛相・自衛隊のサイトにある「防衛省・自衛隊の人員構成」を参照すると 22 万人です。前述の日本の総人口 12,500 万人から自衛官の占める比率は( 0.18 [%] ≒) 0.2 [%] と、なります。

アメリカ軍

ところで自衛隊は専守防衛なのでちょっと雰囲気が違うかもしれません。そこでアメリカ合衆国の軍人を参照します。

ニコニコ大百科では締まらない気はしますが英語が読めないので「アメリカ軍とは (アメリカグンとは) [単語記事]」を参照すると、予備役を入れず 144 万人です。

アメリカ合衆国の人口はグーグル先生が直接教えてくれます。これによると現在 32,310 万人です。
これらからアメリカ軍の比率は全体の( 0.44 [%] ≒) 0.4 [%] となります。

ということで

大都市における冒険者の比率は 0.2 ~ 1.6 [%] くらいが目安になるのではないでしょうか。

大都市の人口

さて、数字が揃いました。改めて、下のようになります。

  • 大都市における冒険者の人数 1,000 人
  • 大都市における冒険者の比率 0.2 ~ 1.6%

以上より、大都市の人口は 6.25 万~ 50 万人となります。

総括

そういうわけでざっくりまとめると大都市(や、特大都市)の人口として下の 2 つの数字が出てきました。

  • 実際の中世ヨーロッパ: 1 万~ 20 万 [人]
  • 想像する世界: 6.25 万~ 50 万 [人]

これらから、大都市の人口は 1 万~ 50 万 [人]となります。比較するとかなり大きな違いがありますが、この辺りは想像の世界の自由度が大きいということで、まぁ、お茶を濁そうかと。

総務省統計局の指定による表示

中世ヨーロッパの人口と都市間距離

人口密度

中世ヨーロッパを想像するわけですが、居住に必要な面積は今も昔も大きく違わないだろうという予想から、一戸建てがほとんどである現代日本の田舎町とそこにある家屋を例に取り上げて算出し、比較検討します。

1. 日本の田舎町から

僕が住んでいる田舎町で考えます。人口は約 1 万 [人] です。面積は住宅が密集している地域を地図で見て、さらに田畑を排除すればざっくり 0.6 [平方 km] ほどです。このことから 人口密度は 16667 [人/平方 km] となります。

2. 日本の家屋から

僕が住んでいる家で考えます。 1 部屋を 2 人で専有するとすれば 1 階だけで 6 [人] は暮らせます。ここの面積が 58 [坪] = 191.7 [平方メートル] です。このことから人口密度は 31299 [人/平方 km] ですが、町にある道などが家屋面積と同じだけあると仮定すれば半分ですので 人口密度は 15650 [人/平方 km] となります。

1 と 2 の比較検討

2 つの例は近い数値になっていて、だいたい同じ程度の規模を表していると見ることができます。間を取ればおおよそ 人口密度は 16000 [人/平方キロメートル] ほどとなります。

町の大きさ

前述の人口密度から下のようになります。

町の人口 [人] 面積 [平方 km] 正方形の 1 辺 [km] 円の直径 [km]
2000 0.1 0.4 0.4
1 万 0.6 0.8 0.9
5 万 3 1.8 2.0
  • 正方形の 1 辺 : 町の形を正方形とした場合の 1 辺の距離
  • 円の直径 : 町の形を円とした場合の直径

町と町の距離

現代日本の町を考えると居住地域は密度の高いところから低いところへグラデーションになっていて、隣町との境界を見つけることはできません。行政区は明確に分かれていますが、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界にある、壁に囲まれた城塞都市のイメージとは大きく異なります。ここでは、すべての都市は城塞都市であり、その他の町や村なども家屋が一箇所に固まっているものとして、それらを隔てる距離を算出します。
東京書籍 中世の都市生活( ISBN 4487760372 )によれば

西ヨーロッパ全域の人口が5000万人! 1300年ごろ,フランスはヨーロッパでいちばん人口の多い国であったが,それでも1500万人を少し上回る程度で,イギリスは300万人から400万人のあいだであった。

とのことで、面積を類推しやすいフランスで考えます。

面積

ざっくり、現代フランスの面積をこれに当てると、 64 万 3800 [平方 km] で、全体に占める居住地域を 10% と仮定するとその面積は 6 万 4380 [平方 km] となります。

町の数

これもざっくり下のように、人口 5 万人の都市が 5 [個] 、人口 3 万人の都市が 44 [個] ……となっていたと仮定し、合計して 都市の数は 1 万 5049 [個] となります。


都市

都市

都市

村落

村落

村落
合計
人口 [人] 5 万 3 万 1 万 0.3 万 0.1 万 300
存在数 [個] 5 44 200 800 0.4 万 1.1 万 1.5049 万
合計人数 [人] 25 万 132 万 200 万 240 万 400 万 300 万 1527 万
都市間距離 [km] 526.5 177.5 83.2 41.6 15.2 11.2
  • 大都市と大都市の距離 : 526.5 [km]
  • 中都市途中都市の距離 : 117.5 [km]
  • 小都市と小都市の距離 : 83.2 [km]
  • 大村落と大村落の距離 : 41.6 [km]
  • 中尊楽途中村落の距離 : 15.2 [km]
  • 小村落と小村落の距離 : 11.2 [km]

計算したスプレッドシート

Google スプレッドシートへのリンクです。

都市の人口と規模やその他